君塚くんは沼らせたい

梨野

推しは推し、恋は別枠──のはずだった

あらすじ

幼なじみの君塚にずっと推し全開で惚れ込んできた佐野。尊い・眩しい・大好き──でもそれは恋じゃない。推しは推し、恋愛とは別枠。そんな揺るぎない佐野の世界が、君塚の「オレ佐野と付き合ってもいいけど?」の一言で揺らぎ始める。急な手相チェックや距離の近すぎるスキンシップ、鍋のハプニングで思わず庇ったり──その全部で佐野を照れさせるつもりが、揺れているのはむしろ君塚自身。推しと恋心の境目でこじらせる幼なじみ2人の、じわじわ恋落ちBLラブコメディ。

この作品の見どころ

「尊い」「眩しい」と幼なじみを推しとして愛でることと、恋をすることの間には、はっきり線がある——本作は、その線引きが少しずつ崩れていく過程だけを丁寧に描いたBLラブコメです。仕掛けるのは推される側の君塚。「オレ佐野と付き合ってもいいけど?」という不意打ちから、手相チェックにスキンシップと、あの手この手で佐野を沼らせにかかります。ところが本作最大の見どころは、攻めているはずの君塚のほうが先に揺れていく逆転構造。照れさせたいのに自分が照れてしまう、落としたいのに落ちていく——仕掛けた側が自分の恋心に絡め取られていく様子が、じれったくも愛おしく描かれます。推し活の語彙で恋を語る佐野の鈍感さも憎めず、二人の会話のテンポの良さはラブコメとして一級品。幼なじみもの、両片想いのじれじれ、そして「推しへの愛」と「恋」の違いに覚えがある方に、自信を持っておすすめできる一作です。
この作品を読む